J SPORTSサイクルブログ

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カヴェンディッシュ3勝目!スプリントの後には、記者とのバトルが待っている

ツールの現場からこんにちは、宮本あさか@Montaubanです。

 

新城幸也選手が人生2度目の敢闘賞に輝き、マーク・カヴェンディッシュ区間3勝目を手にしましたね!私自身は新城選手の活躍で忙しくも楽しい午後を過ごしたわけですが、……カヴの完全復帰にもしみじみとした喜びを感じるのです。

 

実は大会1日目で勝利して、生まれて初めてのマイヨ・ジョーヌを着たカヴは、なんとなくムッとした表情で記者会見場に現れました。

 

表彰台の上ではにっこにこの笑顔でした。フランス放送局のテレビインタビューでも、子供を膝に抱っこして、朗らかに受け答えしていました。それなのに、なぜ、不機嫌なオーラをまき散らしていたのでしょう……??

 

理由は我々記者側にありました。表彰式後のミックスゾーンでは、各国のテレビ局やラジオ今日のために、何度も同じ受け答えを繰り返すことを要求されます。それだけなら、すでに「大人の」カヴは、笑顔で対応することができたはず。ところが、少々いじわるな質問が、続いたようなのです。

さらに記者会見では、諸外国の敏腕記者たちが、ますます辛辣な問いかけを投げかけました。

「開幕前はキッテルvsグライペルの話題ばかりで、君のことはみんな忘れていたんだけど、虚しくはなかった?」
「キッテル、グライペルサガンという世界最強のスプリンターたちを倒したわけだけど、正直、勝てると思ってたわけ?」

プライドを傷つけるような質問をあえて投げかけ、そこから興味深い反応を引き出す……という手腕を好むジャーナリストもたしかに存在します。それに対して興味深い反応を示してくれる選手もまた、たしかに存在するのです。たとえば同じ英国人のウィギンスは放送禁止用語を吐いて会見場を出ていくタイプでしたし、一方のフルームは礼儀正しく、しかしきっぱりと反論を行います。

 

そしてこの日のカヴは、ほんの軽く眉をひそめただけで、できるだけ平静に、いわゆる建前を述べるにとどまりました。殺伐としたマイヨ・ジョーヌ記者会見でした。幸いなことに、最後の最後に、思いもかけない楽しいシーンが待っていたのですが。

「今日の優勝は、今まで一番うれしい優勝ですか??」

会見ルームの片隅から、可愛らしい声で、こんな質問が上がったのです。声の主は、8歳の男の子。キャラバン隊スポンサーである「ジョルナル・ド・ミケ(ミッキーマウス新聞)」の招待で、特別に、1日だけ記者体験を許されたそうです。

カヴェンディッシュの顔に、笑顔が広がりました。しかも甘く、優しいパパの声で、丁寧に答えを述べたのです。

「あのね、どの優勝も、僕にとっては一番うれしい優勝なんだよ。そして1つ1つの勝利が、僕の人生を、素敵なものに変えてくれるんだ。本当にいい質問だね。ありがとう!」

 

2度目の記者会見では、カヴはご機嫌で饒舌でした。しかし3度目のこの日は、またしても、ちょっとだけ不機嫌でした。

 

「君自身はかつてよりも、今の方が強いと思うかい??」

 

かすかに眉をひそめたカヴは、小声でもごもごと、「そんなこと僕にはどうでもいいんだけどなぁ」と答えます。ところが隣にいた英仏通訳が、マイクをもって訳そうとした瞬間に、慌てて「ダメダメ」というジェスチャーをして見せたのです。

 

名ジャーナリストでもある通訳担当は、苦笑いしながら、まずはカヴのコメントを文字通りに訳しました。その後で、「でも、カヴェンディッシュにとって、このセリフは本心ではないんですよ」と、付け足すことも忘れませんでした。

 

ところでカヴェンディッシュの初日記者会見で、個人的に一番衝撃だったのは、彼の顔がすっかり大人の男っぽくなっていたこと。プペ(お人形)とか、アンジェリック(天使っぽい)と言われていた頃の、ぷにぷにしていたほっぺたはなくなってしまったんですね。31歳だから、当然か……。

 

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(左は2008年第5ステージ、人生初のツール区間勝利後。右が今年第1ステージのマイヨ・ジョーヌ記者会見。photo: jeep.vidon)

 

宮本あさか@Montauban