J SPORTSサイクルブログ

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ツール開幕から、1週間が経ちました!

大きなケガを乗り越えてツール出場を果たした新城選手が、開幕6日目にして逃げに乗り、敢闘賞を獲得して表彰台に上るという、この上なくすばらしいニュースも!
テレビの前での応援にも、否が応にも力が入ります。

 

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ツール7日目が終わってのニュースは、まず、今の時点でもまだリタイヤゼロ、という、嬉しいツール新記録。そしてもう一つは、そこここで見かける『57%』の数字。これは、7ステージで4勝という快進撃を続けるチーム・ディメンション・データの、今ツールでのステージ勝率ということになります。


オムニアム(トラック)で悲願のリオ五輪出場を確定させている(団体追い抜きでもメンバーには入っていますが、1チーム4人のところの5人目)マーク・カヴェンディッシュが6ステージ目でハットトリック(3ステージ勝利)達成。2009年ツールではステージ6勝、2010、2011年ツールではステージ5勝を挙げている彼ですが、6日目までに3勝したことはなく、これまでで最速。これからのスプリントステージでも目が離せません。

 

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彼を見るたびに思うのは、いわゆるトップ選手と、その中でもいちばん上のひとにぎり(ラ・クレーム・ドゥ・ラ・クレームとでも言うのかしらん? どうも本場のフランスではあまり使われない表現のようですが・・・)の違いは、このしぶとさ(すみません)だなあということ。スランプや故障といった不運が続き、全盛期の輝きが消えて、もうそろそろ引退なのでは・・・と思わせるような時期がしばらく続いても、そこから不死鳥のように甦って、再び王者の風格を見せる。もうそろそろぽっきり折れちゃうんじゃないかと思っても、決して心が折れないこと。カンチェッラーラしかり、ボーネンしかり。

 

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余談であり、まったく根拠のない私見ではありますが、しばらく不遇が続き、BMCと決別することになったフィリップ・ジルベールも、これで一巻の終わりではないんじゃないかと思う。しぶとそう(再びすみません)ですもの。。。

 

いわゆるエースに限らず、この「折れない心」を持った選手は息が長いなあ、と思います。毎日毎日のストレスやダメージから上手に回復して、モチベーションを持続させながら、長く、長くキャリアを続けられる選手のことを、わたしはとても尊敬しています。

 

頭に血が上りやすく、レース内外の言動が論争を巻き起こすこともありますが、カヴェンディッシュ選手も、2010年に最初にインタビューに行ったときから大好きな選手であります。プロトンでいちばん尊敬する選手は誰か、という質問を同業(メディア)の方に先日いただいたのですが、ぱっと口をついて出てきたのは彼の名前でした。

 

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こうやってじっくりTVでツールを見られるのは、2010年以来のこと。初めてツール取材に行った2010年も、仕事の都合で途中合流でした。国際免許を更新したり、シャツやくつしたを数えたり、しみじみ渡仏の準備をしつつ思うのは、TV中継をちゃんと見ていると、展開がものすごーくよくわかる、ということ。

 

移動で手間取ってしまい、ゴール地に着いたとたん何がなにやらわからぬままフィニッシュラインに直行・・・ということも現地では十分あり得るので、大きなメディアによっては、とにかく何人かはゴールに直行、プレスルームで中継を最初からしっかり見る、というところがあるのも納得です。

 

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最初の休息日を目前にして、各チーム広報からは休息日のプレス会見やイベントのご案内が送られてきます。毎年さまざまな催しがある中で印象に残っているのは、エティックス・クイックステップ恒例の「ムール&フリットを食べようの会」。ムールもフリットもたくさん出してくださるのですが、みなさん尋常でないやる気と胃袋で来られるために、ムール貝をめぐる争いは熾烈でありました。。。

 

・・・というよもやま話はさておき、ツール休息日前あたりに続くのが、来期のチーム体制やスポンサー、選手の移籍関連のニュース。いくつか拾ってみます。

 

まずは、ボーラ・アルゴン18が、ドイツの高級水栓製品ブランド、ハンスグローエを第2スポンサーに迎え、ワールドツアーへの昇格を計画しているというニュース。この新チーム、ボーラ・ハンスグローエは、世界ロード王者のピーター・サガン、ピーターの兄であり、スロバキア国内ロードを制したばかりのユライ・サガンポーランド国内チャンプ、ラファル・マイカらの移籍先になるのではないかとも報じられており、その場合、バイク提供はスペシャライズドになるのではないか、といわれています。

 

今ツール開幕直前、キャノンデールはドラパック・キャピタルパートナーズ(不動産投資会社)を第2スポンサーに迎え、キャノンデール・ドラパックプロサイクリングチームになりましたが、キャノンデールとドラパック・プロサイクリング(プロコンチネンタルチーム)の本格的な合併は来期からとなり、ワールドツアーチームのキャノンデール・ドラパックと、育成チームのドラパック・パッツヴェジ(コンチネンタル)という体制になる見込みです。

 

レキップ紙の報道によれば。BMCレーシングチームが2017年末で解散とのこと。潤沢なチーム資金で知られていたBMCレーシングですが、ソノヴァ・ヒアリング(補聴器ビジネスの会社で、前身はフォナック)の会長だったアンディ・リース氏がチーム運営から手を引くことを決めたようです。2017年以降は他チームへのバイク提供に切り替える方針を考えているとのことです。

 

休息日に大きなニュースを発表します、と言っているジャイアント・アルペシンについては、新しくサンウェブ社(オランダの旅行会社)を第2スポンサーに迎えるのではないか、とAD紙(オランダ)が報じています。現行の第2スポンサー、アルペシンについては、他チームのスポンサーに鞍替えするのではないかという報道もありましたが、正確なところはわかっていません。マルセル・キッテルの移籍後、チームの中心的存在であったジョン・デゲンコルプについては、今期限りでジャイアント・アルペシンを去ることが代理人から発表されました。移籍先については8月初めに発表とのことです。

 

UCIのルール上、正式な移籍契約は8/1以降でないと結ぶことができないのですが、多くの大きな移籍については、ツール前半までに話がまとまっていて、仮の契約(いうなれば、契約書にサインしますという契約のような。。。)が取り交わされているケースが多いように思います。エージェントはとにかくメインの選手の契約を片付けないと、他の選手の契約に本腰を入れられない・・・というところもあるので(セットでチームにお願いするという、そういうパターンもありますが)、ツール序盤までに大きな契約はカタをつけ、そこからツール終盤、そこで決まらなければブエルタあたりまで、他の選手たちの契約の交渉が続く、という感じではないかと思います。

 

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レースはいよいよピレネー2日目! レースからも、レース周りのニュースからも目が離せませんが、2週目以降も、めいっぱいツールを楽しみましょう!

 

寺尾 真紀

Maki Terao (@makiterao) | Twitter

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