J SPORTSサイクルブログ

国内最大4チャンネルのスポーツテレビ局J SPORTSのサイクルブログです。

こわいぞタイムカット。。。

ブエルタ・ア・エスパーニャでは熱戦が続いております。

 

7月のツールではついぞ見ることができなかった、キンタナ、フルーム、そしてコンタドールの鍔迫り合い。昨日の第15ステージ、アラモン・フォルミガルの山頂ゴールでは、分断をきっかけに孤立したフルーム選手が大きくタイムを失いました。

 

ブエルタ・ア・エスパーニャ2016 第15ステージ レースレポート : コラム | J SPORTS

(宮本あさかさんによるレポートはこちら!)

 

昨日のステージで大きな話題となったのが、なんと93人もの選手が、制限時間(優勝者のタイムと平均時速から算出され、昨日の場合は31分24秒がタイム・リミット)をオーバーしたこと。この日の出走164選手の半分以上にタイムアウトの可能性があった訳です。

 

f:id:jsports_cycle:20160905180856j:plain

 

なにかというとUCI競技規則をひっぱりだしたくなるわたくしでありますが、フィニッシュの時間制限について、UCI規則にはこうあります。

 

『フィニッシュの時間制限』

フィニッシュの時間制限は、ステージの性格に合わせて各大会特別規則において定める。

予測不可能で、かつ不可抗力である例外的な場合においてのみ、コミセール・パネルは、主催者との協議後、フィニッシュ制限時間を延長できる。

時間制限を越えた競技者に、チーフ込みセールによって第2のチャンスが与えられた場合に、彼らはこの順位において得点合計が負になるとしても、当該ステージにおける勝者に与えられたと投下のポイントが、彼らの個人総合ポイント順位から差し引かれる。

UCI競技規則 2.6.032 JCF公式ウェブサイト UCI競技規則 日本語訳より)

 

つまり、制限時間は、たとえばブエルタならブエルタ、ツールならツールの『大会レース規則』に定められた方法で算出されるのであります。

 

グランツールの各ステージごとに、制限時間が設定されます。まずはレース規則でそのステージにどのCoefficient(係数)が割り当てられているかを確認し、それから、ステージ優勝者の平均時速を計算します。それは、平均時速によって、下の"X"の部分が変わるからなのです。

 

制限時間 = 優勝者の完走時間 + 優勝者の完走時間の "X" %

ブエルタの今大会のレース規則からの数字を、後ほどこちらに追記させていただきます <(_ _)> )

 

f:id:jsports_cycle:20160905180935j:plain

 

以前は、ステージ出走人数の20%以上の選手が制限時間内に完走できなかった場合には、コミッセールは主催者との協議の上、制限時間を延長できる、という救済規則があったようです。が、手元にあるレース・レギュレーション・ブックで確認できた限りですが、たとえば2013年の大会レース規則には、この『20%以上』ルールはもう見当たりません。(ちなみに昨日の93人はステージ出走人数の57%になります)

 

それでも、グランツールの山岳ステージなどで、グルペット隊長やお世話係の監督がタイムカット時間の計算を間違ったとか、あるいはペース配分がうまくいかずペースアップが間に合わなかった、などでまとまった人数の選手が制限時間オーバーとなった場合には、審判団と主催者の判断で救済措置が適用されることがほとんど、という印象があります。

 

f:id:jsports_cycle:20160905181016j:plain

 

グルペットまとめ役を務めるアダム・ハンセン選手も、「タイムカットがいよいよ危ういときには、グルペットの人数を増やすことがある」、つまり、チーム監督たちも協力し合い、少し前を行くグループを下がらせるなどしてグルペットの人数を多くし、救済措置が適用されやすいようにする、と言っていたことがあるので、原則的には「みんなで遅れれば(それほど)こわくない(かもしれない)・・・」なのかもしれませんが、救済措置が適用されずにたくさんの選手が失格になってしまったステージってあるんだろうか・・・と確認してみたところ、

 

2003年 ジロ・デ・イタリア 第18ステージ

チマコッピが登場したキアナーレへの175km、なんと34人が制限時間オーバーで失格。運よくタイムアウトをまぬがれた選手の述懐によれば、その翌日は

 

◎ サインインもガラガラ、ヴィラージュでコーヒーを待たなくて良くなった

◎ たった1人になってしまった選手は、食卓もひっそり1人、チームバスも大型トレーラーも大部分のスタッフも帰り、キャンパーヴァンにドライバー1人、メカニック1人、マッサー1人が帯同するのみ

◎ 他にも2人、4人だけのチームがあり、6、7人いるのは4チームのみ

 

ちなみにこの日(第19ステージ)はペーター・サガンのエージェント(代理人)、ジョヴァンニ・ロンバルディがステージ優勝しております。タイムカットに間に合ったのですね。。。(←ぺ様ペタッキは間に合わなかった。。。)

 

いずれにせよ、とにかくやはりこわいぞタイムカット・・・なのでありました。

 

寺尾真紀 @ 京都

Maki Terao (@makiterao) | Twitter

寺尾 真紀のコラム一覧 : コラム | J SPORTS